前回の記事では、ユニトラック標準の4%勾配をいかにして正確に設置するかを中心に取り上げた。今回は、その勾配を緩くしてみた事例を紹介する。あわせて、列車両数に応じた適切な勾配設定の目安(主観的基準)も取り上げて、どれくらいの両数だとどれくらいの勾配まで登れるのかも見ていく。





標準勾配の緩和(4%→2%)
そもそもNゲージの標準勾配4%ってきつすぎるんだよな。実車でも4%(=40‰)勾配なんて地方路線でも限られた区間にしかないし、一般的に勾配は2%程度が中心である。Nゲージにおいても、4%勾配を走破できるのは8両編成(1M7T)程度までで、状況によっては10両編成(1M9T)もいけるかなってところ。

なので緩和策を紹介する。2%勾配であれば、メーカー純正品を駆使して勾配を作成することができるので紹介する。

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要点は以下の3点。
①No.4.5以外のすべての橋脚をメイン橋脚として使う。
②高架線路立ち上がり部には、Sジョイナーのみ取り付ける。【SJ】
③複線勾配線路は、長さを62mm延長した上で2%勾配になるよう嵩上げ(←要自作)

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②の実際の状態をここに示す。
作例では安定性向上のため、複線用架線ブラケットを敷いている。これによって高架線路の地上高はおおよそ5mmとなり、高架線路の立ち上がり部勾配を2%に緩和することができるのである。


勾配を2%に緩和すれば、室内灯つきの12両編成でも楽々走破することができる。状況によっては13両編成もいけるだろう。また、それなりに強力な機関車(※)であれば、室内灯つき15両編成の客車を滑らずに引っ張り上げることも可能だ。

※KATO製機関車での一例:EF57、EF58、EF62、EF81、EF510






勾配を1%台にする
2%勾配にすれば大概の長大編成は走破できるのだが・・・・・なんとこの世の中には、これでも登れないと泣き叫ぶ列車さえいるのである。

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その代表例が、KATO製の東海道・山陽新幹線群である。
何を隠そう、彼らは1M15T編成であり、16両編成の中に動力車が1両しかいないというドM編成なのである。特に300系とN700シリーズは動力車の自重が67gしかない(他は81g。ただしT車も重いのでトータル条件はあまり変わらない)。ゆえに登坂できる勾配は1.5%程度が精一杯なのである。

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そのため、純正橋脚をプラバンで2.5mm嵩上げしたモノを新たに用意し、これをメイン橋脚として追加挿入した。これによって高架線路の基本勾配を1.0%~1.34%程度に緩和している。
勾配立ち上がり部は2.0%据え置きにならざるを得ないが(緩和するにはもうゼロから自作するしかない)、トータル勾配長では1.3%程度になり、実用上の問題はないことを確認した。

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これが筆者作例である。土台部分が白いプラバンで嵩上げされた橋脚が、勾配を1%台にするために新調・挿入した橋脚である。
写真のED73+20系客車15両の場合、自重67gの機関車が総重量520gの客車を引っ張るという大変厳しい条件なのだ。そんな列車も安定して通れるように、筆者は工夫を重ねたのである。

ちなみに平均勾配1.5%にする場合、最低でも勾配長はトータル4mは必要になる。筆者は線路を大きく逆S字にカーブさせたりしながらこの緩やか勾配を実現したのだが、こればかりは部屋のスペースの問題が大きく横たわっちゃうな。

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ちなみに1%勾配ってこんな感じ。実車の大幹線ではこのレベルの勾配に抑えながらアップダウンしているってのが凄い。





まとめ
●8両編成までなら、4%勾配を走破可能。

●10両編成だったら、3%勾配が上限かな。

●12-13両編成だったら、2%勾配が上限。

●1M15T編成だったら、平均勾配1.5%以下にしよう。


今回は実在する特甲線レベルのゆるい勾配の作例をご紹介したが、なにも全てが全てこのゆるゆる勾配にするのは適切じゃない。勾配が緩ければ緩いほど坂の長さを長く取る必要があるし、登坂力に余裕のある列車を走らせる場合には無駄な設定になってしまう。
走らせる列車の長さと重さに応じて勾配の度合いを決めていくのが重要である。

そして、勾配対策では車両面での対策(強力な動力車に取り換えたり、動力車の数を増やしたり)がよく挙げられるが、線路面での勾配緩和も視野に入れてもらえば、車両導入・維持コストを抑えられることを念頭に置いておこう。

例えば、4%勾配を2%勾配にしたら大半の車両が通れるようになったけど、貨物列車だけは不可能だった。だからこの列車だけは動力車2両(=重連)にしよう・・・・・といった感じである。

ちなみに筆者の場合、1M15T編成が既にいっぱいいるから、これは勾配をとことん緩やかにした方が得策だな・・・・・ということで、ここまでアホみたいにゆるゆるな勾配にしたわけである。

車両面と線路面。両方の施策を組み合わせながら最適な手法を取るのが適正だろう。