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一畑電車支援計画(令和3~7年度) - 一畑電車沿線地域対策協議会(島根県・松江市・出雲市)より。

一畑電車支援計画の2021~2025年度版が公開されていた。今回はその中でも目玉となる車両更新について取り上げ、更に置き換え前後の両数変化においても深堀りしてみた。

車両更新に関しては、2024~2025年度に7000系タイプの新車4両を導入し、これによって残存する旧型車8両(ただし執筆現在では10両残存)をすべて置き換えるとのこと。新車のみで車両更新を行うというのもかなり思い切った施策だが、これも中古導入を含めた各種検討の結果決まったようだ。その検討内容は、リンク先資料の21ページをご覧いただきたい。
どうやら中古導入の場合、新車と比べて購入コストは安上がりなものの、電装機器類の修繕にかなりの額を要するため、トータルコストでは新車と大差ないようである。




4両で8両を置き換えると聞くと安直な減車に見えるが、実際はそうでもない。車両を減らす依拠もきちんと記されていた。

リンク先資料の22ページによれば、最も利用客の多い平日朝方にて4運用を2両から1両に削減できると見積もられている。両数削減対象とされているのは、A・B・C・E運用。
このうちA・E運用は、最混雑区間においても乗客数は7000系の車両定員の半分にも満たないとのこと。これは確かに1両に削減しても何ら問題ないと思われる。また、C運用に関しては、300列車の平田~出雲市間の乗客数が多く、平田~川跡間は車両定員の8割、川跡~出雲市間は同6割程度の乗客が利用しているとのこと。最も乗客が多い区間は平田~川跡間となるが、ここの所要時間は大体10分程度であり、そこを過ぎれば乗客数は座席が全て埋まる程度となるので、これも両数削減は可能と見て取れる。

一方で、削減して大丈夫か?となったのが、B運用の6:44出雲市発しんじ湖温泉ゆき303列車。この列車は、運行時間帯が松江方面への通勤通学時間帯にかかっている。平田までは乗車率4割程度になるが、そこから先は乗車率が6割程度まで増える。そして松江市内に該当する津ノ森~しんじ湖温泉間では、乗車率が定員の8~10割に達する。
所要時間は平田~しんじ湖温泉間で約40分、乗車率が特に高い津ノ森~しんじ湖温泉間にて約20分程度。満員に近い状態がこれだけ長く続くとなると、利用者側としては苦しいのかも。一応、乗車率だけで見る限りは、北陸や広島ほど悲惨なことにはならなさそうだが、混雑率上昇によって乗降に手間取り、停車時間が増大したり遅延が起きやすくなる懸念はある。


ちなみに、この列車の最混雑区間は秋鹿町~ガーデン前となっているが、これは以下2つの学生の通学ルートが輻輳している影響と思われる。
●松江市内各駅からしんじ湖温泉駅まで乗車し、市内各校へ向かう学生
●途中の朝日ヶ丘・ガーデン前駅最寄りの学校へ向かう学生

この傾向は、この次に運行される305列車:特急しんじ湖温泉ゆきでも見られる。ただ、今回取り上げた303列車の場合、この傾向は朝日ヶ丘駅前後で顕著になると思われる。理由は二つ。一つ目は、朝日ヶ丘駅には305列車:特急は停車しないため。そして二つ目は、この駅の最寄り校へ向かう学生と、この駅からしんじ湖温泉駅まで乗る学生が存在するからだ。



色々と気になる点はあるが、一畑電車と沿線自治体の積極的な取り組みには頭が下がる思いである。